ちまっちアットワーク


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子どもの頃からずっと、動物と一緒に暮らしてきた。
物心がついた頃には、父親が飼っていたイングリッシュセッターがいたし、中学生の頃には友達のおばあちゃん宅からもらった猫を飼っていた。結婚して数年してその猫が亡くなって、ご主人からの提案で、犬と暮らすようになった。
「犬なら、どこへだって一緒に行かれる」
ご主人のこの言葉に素直に共感できた。
こうして一緒に暮らし始めたのは、キャバリア・キング・チャールズ・スパニエル。からだの高さよりも体長が少し長く、優雅でつやつやの毛がかわいらしいワンコだ。

幼い頃に着ていた洋服は、母親の手作りのものが多かった。
1枚の布が自分サイズの洋服に仕立て上がっていく様子を見るたびに、まるで魔法のように感じていた。だからといって洋裁の道を志すほどではなかったけれど、何かを作ることは好きになった。小学校高学年のときに選んだクラブ活動は、縫い物クラブ。大学生の頃にはテディベア、なかでもメリーソート社のテディベアに夢中になった。ところがなかなか高価で学生には手が出ない。だから自分で作るようになったという。
犬の服を作るようになったきっかけは、一緒に暮らしているキャバリアにサイズが合う洋服がなかったから。そこで手作りしてみたら、
「すっかりハマってしまったんです」と“ちま”こと山嶋身貴子さんは言う。
“ちま”は作家名。ブランド名は“ちまっちアットワーク”だ。

山嶋さんが作る洋服は、基本、人の服を犬の服に作り変える、というもの。

愛犬のために初めて作った服がこちら
愛犬のために初めて作った服がこちら

自分が着ていたパーカーをリメイクして作ったのが第一作目。すっかり面白くなって次々と服を作っていくうちに、さまざまなわんちゃんの服を作ってみたいと思うようになっていった。弾む気持ちは止まらない。2011年秋には“50着試作キャペーン”を実施。
ブログで募って、作る。
このキャンペーンを通じて、販売の疑似体験をした。感じたことはたくさんあった。
飼い主が着ていた飼い主の匂いがする洋服で作るから、わんちゃんが安心できること。飼い主とわんちゃんでお揃いのオーダーができること。
こんな風に“ストーリーのある服づくり”ができることの面白さに気づけたのは、大きな収穫だった。キャバリア以外の、チワワやトイプードル、ダックスフントなど、さまざまな種類のわんちゃんの洋服を作ることができたのも大いに勉強になった。
オーダーメイドだからとピッタリに作りすぎて着ることができなかったことなど、反省点もいくつかあった。

その後、犬を介して友達になった方を中心に販売を開始。2012年4月には、朝霧高原で開催されたフリマーケットに初参加することに。以来、このイベントにはずっと参加し続けているという。

2012年秋のこと。
わんちゃんにつけるバンダナを紐で作ったら、落としてなくしてしまった。今度は落とさないように、紐ではなくゴムを使って製作。ふざけてわんちゃんの頭にはめてみたら……まるでサンバイザーのよう! 山嶋さんが閃いた瞬間だった。

白内障や緑内障など、わんちゃんが目の病気にかかることもある。
その予防になるかもしれない。そんな思いから、サンバイザーの型紙を自分で開発するところからスタートした。

山嶋さんが作るわんちゃんの洋服はオーダーメイドだが、サンバイザーは試着して、その場で買うことができるアイテム。真夏の強い日差しに、人間だってサングラスや帽子の必要性を感じる。それは、わんちゃんだって同じこと。目の保護になるものがあれば使いたい。愛犬家のそんなニーズにぴったり合致しているうえ、見た目もかわいくてオシャレ。わんちゃんがブルブルと顔を振っても落ちにくい。機能性と実用性、そしてファッション性を兼ね備えたサンバイザーは、会場内にて口コミで広がり、たくさんのお客さまが販売ブースを訪れ、大にぎわいだったそう。

わんちゃんが下を向いたりブルブルしても外れにくいのが「ちまっちアットワーク」のサンバイザーの特長だ
わんちゃんが下を向いたりブルブルしても外れにくいのが「ちまっちアットワーク」のサンバイザーの特長だ

「ドッグラウンジ・クルーヴハル」は、富士市国久保の交差点から徒歩1分のところにある
「ドッグラウンジ・クルーヴハル」は、富士市国久保の交差点から徒歩1分のところにある

山嶋さんがよく通っていた富士市のドッグカフェ「カフェ・クルーヴハル」が閉店すると聞き、2013年夏、前オーナーから、現在のオーナーのユキさんと2人で居心地のいい大好きな空間を引き継いだ。いつかカフェをやりたいと夢を描いていたユキさんと、工房とミーティングスペースがほしいと願っていた山嶋さんの2人で、この空間と時間をシェアするカタチでスタートした。ユキさんも、f-Bizのマーケティングディレクターの中野美保子さんから、ブログなどITに関するアドバイスを受けている。

「クルーヴハル」では雑貨の販売も。もちろん「ちまっちアットワーク」のアイテムも販売している。アイテムのひとつであるサンバイザーは、サイズも生地の種類も豊富
「クルーヴハル」では雑貨の販売も。もちろん「ちまっちアットワーク」のアイテムも販売している。アイテムのひとつであるサンバイザーは、サイズも生地の種類も豊富

山嶋さんの愛犬はなちゃんと、ユキさんの愛犬つくしちゃん(右)。2匹とも「ちまっちアットワーク」が作る洋服を着ておすまし。
山嶋さんの愛犬はなちゃんと、ユキさんの愛犬つくしちゃん(右)。2匹とも「ちまっちアットワーク」が作る洋服を着ておすまし。

「一度作り始めると、途中で止めらない性格で(苦笑)」と山嶋さんは苦笑い。あまりの忙しさにカフェに泊まり込む日も出てくるようになってしまった。そこで、2015年10月、自宅に工房を構え独立した。
f-Bizを訪れたのは「今までと違って、本格的に販売に取り組むにあたって、気をつけることがあれば教えてほしいと思って」と山嶋さん。
相談に訪れて感じたのは“プロの責任と覚悟”の大切さだったそう。
「自分がいかに素人だったか、思い知ったと同時に『どうしてもやってみたい!』という気持ちが強くなりました。そして、プロの責任と覚悟については、原賀さんからたくさん教わったんです」

右から、ユキさん、山嶋さん、原賀さん。はなちゃんと山嶋さんのベレー帽はおそろい。以前山嶋さんが気に入っていた洋服を利用して作られている
右から、ユキさん、山嶋さん、原賀さん。はなちゃんと山嶋さんのベレー帽はおそろい。以前山嶋さんが気に入っていた洋服を利用して作られている

「まめひろ」の代表である原賀弘子さんは、販路開拓アドバイザーとして活躍する。

昔は番犬として、外で飼われていたわんちゃんたち。でも今は、家のなかで、たくさんの愛情を注がれながら暮らしているわんちゃんが多い。通常は季節による気温の変化に対応し毛が生え変わるのだが、最近ではそれが起こらないわんちゃんもいるそうだ。また、ドッグランなどで初対面のわんちゃん同士で噛み合ってしまうことが稀にある。そんなとき、洋服に穴が開いたけどわんちゃんには怪我がなかった、という洋服を着ていて良かった場面もある。

「こういう話をたくさん山嶋さんからお聞きしました。人間と同じように、冷暖房の効いた家のなかで暮らしているのだから、洋服が必要だということに大いに納得。また、山嶋さんの作る洋服は、大量生産のものにはない温もりがあるうえ、体型に合わせた縫製や、わんちゃんが着やすくて動きやすい工夫が随所にあるところに魅力を感じました」と原賀さん。

現在は原賀さんからの提案で、写真撮影用の衣装づくりも展開中。
「普段着るものとは違い見た目重視なので、作り方が違うんです。撮影時には。伏せやお座りのポーズで動きを止めるので、そのポーズをしているときに一番素敵に見えるよう洋服を作り込むことができるのも楽しいんです」と山嶋さんは楽しそう。

「人間の洋服、つまり繊維製品には、表示法という法律によって表示しなくてはいけないものが定められているんです。犬はどうかと調べてみたら特にないんです。でも、表示がないのはなぜか、どんな素材を使っているのか、お客さまに聞かれたときにはきちんと答えられないといけない。それがプロだと思うんです。山嶋さんにはそういうお話をいくつかしました」と原賀さん。これが、山嶋さんが言う“プロとしての仕事と覚悟”なのだろう。

山嶋さんが作るアイテムには、すべてシリアルナンバーが入っている。
「以前、家族の飼っていた犬が迷子になっちゃって。柴犬でこれといって特徴がないうえ、運悪く、手元に写真が残っていなかったんです。探しに探しましたが、でも見つからなくて……。本当に苦く悲しい経験をしました。私と同じような思いをしてほしくない。そんな思いで、ユーザー登録を始めることにしたんです。もし迷子になっても、見つけてくださった方が、身につけてるサンバイザーや洋服に書いてある『ちまっちアットワーク』の連絡先に気づいて連絡をくれるかもしれない。そうしたら、私もお客さまとわんちゃんを繋げるお手伝いができますよね」

アイテムの製作と販売はもちろん、顧客である飼い主とわんちゃんの気持ちに寄り添えるところも、山嶋さんの魅力のひとつだろう
アイテムの製作と販売はもちろん、顧客である飼い主とわんちゃんの気持ちに寄り添えるところも、山嶋さんの魅力のひとつだろう

2016年2月からは、BASEを利用してネットショップをオープン。中野美保子さんからのアドバイスが大いに役立った。
また、洋画家が開催する犬と猫をテーマにした「わんにゃん展」にて、山嶋さんの作るサンバイザーを販売するという販路を原賀さんが開拓。こちらは、松坂屋富士ギフトショップにて、2016年5月26日(木)から28日(土)に実施される。

ちまっちアットワーク http://ameblo.jp/chimatch/
ドッグラウンジ・クルーヴハル(地図も) http://dlklovharun.i-ra.jp/